東京高等裁判所 昭和40年(行コ)52号 判決
右のような事実関係に徴すれば、住居地域内に当初工場用として建築された本件建物があつても、既に控訴人が主張するような危害を惹起する蓋然性はないものというべく、またそれが控訴人のいうように住居地域における家庭生活の平穏、安全を害し、控訴人およびその家族に不便、不快、不利益を蒙らしめているような事実は全く認められない。従つて本件建築確認処分につき、仮りに控訴人主張のような建築諸法規に適合しない違法があつたとしても、控訴人およびその家族が本件建築確認処分の結果当然に、または右確認処分に基き建築された本件建物の存在することにより現に損害を受けまたは受けるおそれがあるものとは到底いえない。
されば控訴人は本件建築確認処分の無効確認を求める法律上の利益を有しないものというべきである。また仮りに控訴人の危惧するとおり将来本件建物を所有しまたは占有して工場操業により控訴人を初め近隣居住者に生活上の迷惑を及ぼし、違法に損害を生ぜしめる者あるに至れば、その理由によりその者を相手方として、違法行為の禁止を求める等現在の法律関係に関する訴を提起することによつて十分その目的を達することができる(それは本件建築確認処分が無効であれば勿論、仮令無効でないにしても)ものと考えられる。従つて控訴人は本件建築確認処分の無効確認の訴を提起するにつき、行政事件訴訟法第三十六条にいわゆる「原告適格」を欠くものというべきであるから、本件訴訟は不適法として却下を免がれない。
(奥野 野本 萩原)